7倍壁(壁倍率>5)対応まとめ
対象:2025年4月以降の運用で、壁倍率7クラス(壁倍率>5)の耐力壁を採用する案件。
前提:N値計算は実施/適合する認定金物を採用
1. merikomi_calc.html の使用方法(めり込み検討 自動計算→印刷(PDF保存))
1) 事前準備
merikomi_calc.htmlをPCに保存し、ブラウザ(Chrome推奨)で開きます。- CDN(jsPDF)がブロックされる場合は、PDF出力ではなく「印刷 → PDF保存」を使います。
2) 前提条件(上段)
- 建物階数:
2階建て/1階建て(平屋)(見出し出力用) - 柱・土台断面:
105×105/120×120(mm) - ほぞ欠損:既定
30×90(mm) - 土台材(Fcv):樹種グループから選択(必要なら手入力で上書き)
- 許容めり込み応力度の係数:既定
短期=(2/3)×Fcv - 有効接触面積
A_e(mm²)が自動表示(断面−欠損±加算)
土台材(Fcv)の選択(添付資料「表1」)
土台材の「基準強度(Fcv)」は、入力画面で 樹種グループ から選択します(必要に応じて数値を手入力で上書き可)。
下表は添付資料「表1」の転記です(単位:N/mm²)。
| 区分 | 樹種(グループ) | 基準強度 Fcv |
|---|---|---|
| 針葉樹 | あかまつ、くろまつ及びべいまつ | 9.0 |
| 針葉樹 | からまつ、ひば、ひのき、べいひ及びべいひば | 7.8 |
| 針葉樹 | つが、べいつが、もみ、えぞまつ、とどまつ、べにまつ、すぎ、べいすぎ及びスプルース | 6.0 |
| 広葉樹 | かし | 12.0 |
| 広葉樹 | くり、なら、ぶな及びけやき | 10.8 |
3) 壁ごとの入力(最大5ケース)
- ケース選択:ケース1〜5のチェックをONにしたものだけ、計算・印刷に反映されます。
- 検討名(任意):各ケースの名前(例:南面外周 7倍壁)
- 壁倍率
r(例:7.0) - 耐力壁の長さ(壁幅)
L(m)※1.00m(1mモジュール)/ 0.91m(910モジュール)等。壁倍率→力への換算に影響します。 - 柱位置(係数B):出隅
0.8/ 中柱0.5(必要なら任意Bも可) - 階高さ
H(m) - 長期軸力
L_N(kN)※既定値:10kN(必要に応じて変更) - 【最新版追記】 長期軸力
L_Nは、該当柱の負担面積(m²)と上部構造荷重w(kN/m²)からL_N = 負担面積×w(kN)として算定し、「負担面積×w(P=1.3加算済)で L_N に反映」で入力欄へ反映できます。(該当の柱を柱負担面積で算出した値を入力【c014】
※上部構造荷重wの目安値は「小規模建築物基礎設計指針」表4.1.2(上部構造荷重の目安値/建築面積あたり)を根拠として使用します。
※本ツールのwは、同表のwに P=1.3 kN/m²(柱・基礎計算用) を加算した値(w+P)を選択肢として用います。
ツールでこの方法を用いた場合、印刷される計算書に算定式と出典が自動で明記されます(手入力の場合は明記しません)。
表4.1.2の w(kN/m²) w + P(P=1.3 kN/m²) 4.0 5.3 7.0 8.3 10.0 11.3 12.5 13.8 - 備考(任意)
4) 計算式(画面右の結果と同じ)
追記(重要):1.96 と「壁の長さ L」の関係
壁倍率 r は「壁長 L(m) あたりの耐力」を表すため、1.96 は 倍率=1を算定するための基準値(kN/m) として扱われます。
よって 壁長 L が 1.00m でない場合(例:0.91m)には、結果が比例して変化します。出典は [4](JTCCM 業務方法書)です。
- (参考:L=1.00m の場合の簡略式) N = 1.96 × r × B × H(kN)
- 【最新】 Q = 1.96 × r × L(kN)
- 【最新】 N = Q × B × H(kN) = 1.96 × r × L × B × H(kN)
- S_N = N + L_N(kN)
- σ = (S_N×1000) / A_e(N/mm²)
- σ_allow = 係数 × Fcv(N/mm²)
- 判定:σ ≤ σ_allow → OK
| 例(壁倍率 r) | 壁長 L (m) | Q=1.96×r×L (kN) | ポイント |
|---|---|---|---|
| r=7.0 | 1.00 | 13.72 | 1mモジュール想定。旧説明の「N=1.96×r×B×H」はこの場合に一致します。 |
| r=7.0 | 0.91 | 12.49 | 910モジュール等。Qが 0.91倍 になるため、N・σも同様に比例して変化します。 |
5) 印刷(PDF保存)とデータ保存
- (旧機能)「PDF出力」:ブラウザでPDFをダウンロード(jsPDF) ※最新版ではボタン自体を削除している運用です。
- 推奨:「印刷」ボタン → 印刷ダイアログで「PDFに保存」※提出用は右側の計算結果のみが出力されます(入力欄は印刷されません)。
- 保存:入力内容を JSON として保存(案件フォルダに保管)
- 読込:保存したJSONを読み込み(再計算/再印刷が即可能)
- 自動保存:ブラウザの
localStorageに自動保存(誤操作・再起動時の復元用)
2. この検討書を付ける理由(なぜ“めり込み”が追加で指摘されるのか)
- 壁倍率が 5を超える(例:7倍) と、耐力壁端部柱に生じる 軸力(圧縮・引抜)が増加 しやすい。
- このうち 圧縮側 は、柱脚で 土台(または横架材)への局部支圧=めり込み として現れる。
- 審査側の典型指摘:「壁倍率>5では圧縮力・引抜力に対して横架材・基礎梁の耐力確認が必要。本件は土台の短期めり込み検討を提出してください。」
社内運用の結論:N値計算(引抜)+認定金物 は通常どおり行う前提。
「追加の別計算」として最も求められやすいのが 土台の短期めり込み(圧縮側)。
ただし指摘文に「基礎梁」等が含まれる場合、計算追加ではなく 成立根拠(図面抜粋)の提示 を求められることがあります。
3. どういうときに検討書を付けなければいけないか(判断基準)
A) 原則:付ける(推奨)
- 壁倍率 >5 の耐力壁(例:7倍壁)を採用する場合
- 併用(面材+筋かい等)で、加算倍率の合計が>5 になる場合
- 採用耐力壁の 施工仕様書(認定条件) に「>5のとき確認」と明記されている場合
B) 指摘が来たら必須
- 確認申請・長期優良住宅(評価/認定)のいずれでも、提出を求められた場合は必須
C) 付けなくても通る可能性はあるが、リスクが残る
- 建築確認の必須審査項目としては「周辺部材影響は不要」という整理がある一方、審査機関の運用で求められることがあります。
4. 法改正後の7倍壁まとめ(押さえる論点)
4.1 制度側の線引き(要点)
- 壁倍率>5の 周辺部材影響(横架材・基礎梁) は、建築確認の必須審査としては確認不要 という整理が示されています(ただし配慮は望ましい)。
- 一方で、壁倍率>5では従来の仕様想定外となるため、柱頭・柱脚仕口はN値計算で必要引張力を算定 して金物選定する整理が示されています。
4.2 併用で実倍率が7を超える場合
- 壁量算定は 7として扱う 一方、柱頭・柱脚等の検証は 実倍率 を用いる、という整理が示されています。
5. 審査での対応(確認申請/長期優良住宅 共通)
5.1 社内標準「最小セット」
- 土台の短期めり込み検討書(merikomi_calc.html で作成)
- N値計算書(壁倍率7を反映)+金物表
- 金物の根拠資料(認定・性能表など)
- 耐力壁 施工仕様書の該当ページ(倍率上限、併用条件、>5の注意書き)
- (指摘文に「基礎梁」等が明記される場合)図面抜粋(基礎伏図・配筋図・金物配置図)
※計算追加ではなく「荷重伝達(Load Path)が成立している」説明資料として提出。
5.2 返答文(短文テンプレ)
当該壁は壁倍率【7.0】の耐力壁であり、施工仕様書の適用条件に基づき計画しています。
壁倍率>5に伴う柱脚部の圧縮側について、土台の短期めり込み検討を実施しました(別紙)。
引抜についてはN値計算により必要引張力を算定し、適合する認定金物で成立していることを確認しています(別紙)。
(必要時)基礎伏図・配筋図・金物配置図の該当部を添付し、荷重伝達が成立していることを示します。
6. 出典(社内保存用:URLと日付/版を残す)
-
[1] 国土交通省(2024-05-31)
「関係告示の制定・改正に関する意見募集の結果(Q&A)」
https://www.mlit.go.jp/common/001746202.pdf -
[2] 国土交通省(制度説明資料)
「建築基準法・建築物省エネ法 改正法 制度説明資料」
https://www.mlit.go.jp/common/001627103.pdf -
[3] 施工仕様書例:吉野石膏(令和7年7月版の記載あり)
「タイガーEXハイパー耐力壁 木造軸組大壁工法 施工仕様書(K-011-31)」
※「加算した倍率合計が5を超える場合…圧縮力及び引抜力に対して横架材・基礎ばり…確認」等
(PDFリンク) -
[4] JTCCM(2025-04-01 変更の記載あり)
「木造耐力壁、準耐力壁等及びその倍率の試験・評価業務方法書」
※倍率定義:倍率=Pa/(1.96L)、かつ 1.96 は「倍率=1を算定するための数値(kN/m)」、L は壁の長さ(m)
(PDFリンク) -
[5] 住宅性能評価・表示協会(長期優良の公開資料)
https://www.hyoukakyoukai.or.jp/chouki/ -
[6] 小規模建築物基礎設計指針
※表4.1.2「上部構造荷重の目安値(建築面積あたり)」を根拠として、上部構造荷重 w(kN/m²)を使用(注:同表の注意により、1階床荷重および基礎自重は含まれない整理)。本ツールでは柱・基礎計算用として P=1.3 kN/m² を加算した w+P を選択肢として採用。
運用メモ:案件ごとに採用耐力壁の「施工仕様書」の注意書きが異なる場合があります。
必ず当該製品の認定・評価資料の該当ページを添付し、指摘文の根拠を“その製品の文言”に合わせて返答してください。